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科学・健康などについての海外の記事を適当に紹介していきます

抗生物質の探索は海底へ

研究者らは海底から抗生物質を探す800万ポンドのプロジェクトに乗り出している
Aberdeen大学の科学者らによるチームは,海溝で進化してきた生物の中からこれまで発見されていない化学物質を見つけようとしている.プロジェクトリーダーのMarcel Jaspars教授は次世代の抗生物質を発見したいと述べている.

イングランドの医療責任者は,現在開発中の抗生物質があまりに少ないことから抗生物質危機になることを警告している.

これまで深さ11kmにも及ぶ海溝からサンプルを回収した例はほとんどなく,研究者らはそのような極端な環境でこそ抗生物質を発見する大きな可能性があると信じている.

抗生物質が発見されるより前の時代
抗生物質の不適切な処方により耐性菌が増加しつつあり,医療専門家は有効な抗生物質が尽きることを恐れている.

Mrcel Jaspars教授は「このまま何もしないでいると,我々はあと10年から20年で"抗生物質が発見されるより前の時代"に戻ることになり,そうなった場合,今なら簡単に治る病気が致命的になりえる.」と語っている.また,2003年以降,完全に新しい抗生物質は開発されておらず,その理由の一部は製薬会社にとって抗生物質は全く儲からないことにあると教授は語っている.

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結核ワクチンの望み絶たれる

新しいブースター結核ワクチンの試みが失敗し,結核に対する戦いは頓挫

BCGワクチンが1921年に発明されて以来初の,乳幼児に対する大規模な実験が行われた.

BCGは結核を引き起こす細菌に対して部分的にしか有効でないことから,複数の国際チームが新しいワクチンの研究をおこなっている.

MVA85Aと呼ばれるワクチンは,すでにBCGを受けている状態でその効果を強めるワクチンとして開発されたが,乳幼児に対しては効果がないことがわかった.調査は南アフリカで2794人の生後4〜6ヶ月の乳幼児に対して行われたが,MVA85Aと偽薬を与えられたグループで統計的に有意な差は見られなかった.

'がっかり'

新たな結核ワクチンを開発するために設立されたNPOであるAERASが開発の援助をしている6つのワクチンのうち,最も開発が進んでいたのがMVA85Aだった.AERASの暫定CEOのトム・エバンス博士は「世界的な結核の流行を抑える必要性が高まっている中,今回のような失敗があっても,我々はより良いワクチンは作れるはずであるという信念を持ち続ける」と述べている.WHOによると,世界の結核患者数は870万人で,結核により毎年140万人が死亡している.また,南アフリカでは結核がHIV感染者の一番の死亡理由となっている.

歴史的

疫学者のリチャード・ホワイト博士は次のように述べている.「がっかりする結果だが,人に対して試験がされている12のワクチンと,研究室で試験されている50のワクチンのうちの一つ目の結果に過ぎない.今回の結果は,ほぼ一世紀ぶりの歴史的な挑戦であり,将来有効なワクチンを設計するための重要な知見につながるはずだ.」

コメント:AERASのウェブサイトを見ると,開発中のそれぞれの結核ワクチンが臨床試験のどの段階まで進んでいるのかがわかっておもしろい.弾はまだ残っているということのようだ.ちなみに,創業者にはビル&メリンダ・ゲイツ財団も名を連ねている.

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不幸な子供時代と将来の心疾患リスクに関連あり

子供時代の感情体験が,特に女性の場合,中年での心疾患と関連していると研究者らは述べている.
調査により,7歳のときの強いストレスを感じやすい傾向が,将来のかなり高い心疾患リスクと関連していることがわかった.逆に,集中力のあった子供は,同様のリスクがかなり減少するという.アメリカの研究者らは,この関連をもっと理解するためにはより多くの調査が必要だとしている.

この調査は,子供時代から調査に参加していた377人の40代前半の大人に対して行った.彼らは7歳のときに感情行動を見るテストを受けていた.

心臓の疾患のリスクに影響する因子を調整したうえで,7歳の時の大きなストレスを受けた女性は,中年になってからの心血管疾患のリスクがそうでない人に比べ31%高くなることがわかった.男性の場合,子供時代の高いレベルのストレス(すぐイライラして腹を立ててしまうことも含まれる)は心血管疾患のリスクが17%高くなることを意味する.40代になってからの心臓発作のリスクも,子供時代にストレスがあった場合,女性では通常の3.2%から4.2%に,男性では7.3%から8.5%に上昇した.

出典:http://www.bbc.co.uk/news/health-21299549

コメント:この記事を気にするのは7歳の子供を持つ親たちだろう。これからは子供の40歳になった時の心疾患のリスクまで気に留めなければならないのだろうか。ストレスで心疾患にならなければ良いが。

高齢出産では陣痛を早めることで死産のリスクが減らせる

「40歳以上の妊婦には,陣痛を早めることで,死産の可能性を減らすという選択肢があるべきだ」とRoyal College of Obstetricians and Gynaecologistsの論文は述べている.

通常の41週ではなく39週で陣痛を促すことで,イギリス全体で毎年17の死産を防ぐことができる,と著者らは述べている.

根拠

データによると,39〜40週の妊娠期間は,40歳以上の女性では,35歳以下の女性に比べ,死産のリスクが倍になる.しかし,39週の場合,40歳以上の女性のリスクが下がり,41週の妊娠をする20代後半の女性と同程度になるという.

著者のDr Kenyonは「40歳以上の妊婦の場合,39〜40週の初期に陣痛を促すことで,帝王切開などのリスクを上げることなく,死産を防ぐことができるという結論は妥当である」と述べている.

550人の女性がそのような処置を受けるごとに,イギリスで毎年1つの死産が防げると著者は計算している.

出典:http://www.bbc.co.uk/news/health-21277369