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結核ワクチンの望み絶たれる

新しいブースター結核ワクチンの試みが失敗し,結核に対する戦いは頓挫

BCGワクチンが1921年に発明されて以来初の,乳幼児に対する大規模な実験が行われた.

BCGは結核を引き起こす細菌に対して部分的にしか有効でないことから,複数の国際チームが新しいワクチンの研究をおこなっている.

MVA85Aと呼ばれるワクチンは,すでにBCGを受けている状態でその効果を強めるワクチンとして開発されたが,乳幼児に対しては効果がないことがわかった.調査は南アフリカで2794人の生後4〜6ヶ月の乳幼児に対して行われたが,MVA85Aと偽薬を与えられたグループで統計的に有意な差は見られなかった.

'がっかり'

新たな結核ワクチンを開発するために設立されたNPOであるAERASが開発の援助をしている6つのワクチンのうち,最も開発が進んでいたのがMVA85Aだった.AERASの暫定CEOのトム・エバンス博士は「世界的な結核の流行を抑える必要性が高まっている中,今回のような失敗があっても,我々はより良いワクチンは作れるはずであるという信念を持ち続ける」と述べている.WHOによると,世界の結核患者数は870万人で,結核により毎年140万人が死亡している.また,南アフリカでは結核がHIV感染者の一番の死亡理由となっている.

歴史的

疫学者のリチャード・ホワイト博士は次のように述べている.「がっかりする結果だが,人に対して試験がされている12のワクチンと,研究室で試験されている50のワクチンのうちの一つ目の結果に過ぎない.今回の結果は,ほぼ一世紀ぶりの歴史的な挑戦であり,将来有効なワクチンを設計するための重要な知見につながるはずだ.」

コメント:AERASのウェブサイトを見ると,開発中のそれぞれの結核ワクチンが臨床試験のどの段階まで進んでいるのかがわかっておもしろい.弾はまだ残っているということのようだ.ちなみに,創業者にはビル&メリンダ・ゲイツ財団も名を連ねている.

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